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その影は海児に殴りかかろうとしていた鬼の腕を刀で受け止めて弾き返し、勢いを殺さずそのまま鬼の心臓を刺し貫いた。硬質化している鬼の皮膚が嘘のように裂け、鬼は声もなく倒れる。
直後、真横の鬼の頭上へ飛び上がり、刀を横薙(ヨコナ)ぎに放つ。刀はまるで紙切れを裂くように、鬼の頭部を真っ二つにした。
「アンタ、あの子……!!」
「ふん……すっかりいっぱしの『村守』だな」
海児がニヤリと笑う。そうしている間に、村人達の前には六体もの鬼の屍が転がっていた。鬼を倒した少年は、髪の後ろのまげを気にしながら刀を鞘におさめる。
「ケガはない? おとうさん、おかあさん」
「ああ、大丈夫だよ。ありがとう、助けられたね」
「そんな……」
「へン、お強いこった。調子に乗ってるといつか足元すくわれるぞ? 桃太」
その少年は、あの時桃から産まれた男の子。
七節桃太(ナナフシトウタ)だった。
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