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「だけど」
次の瞬間、早乃はにこやかな表情を一変させた。
「……あの子はいなくなったんだ」
「いなく……なった? まさか」
早乃がうなずく。
「鬼がやってきたんだ。満月の晩。いつものように、二人がこっそりと家を抜け出して遊んでいた所に、鬼が現れたんだ。
その日は特に数が多かったんだろうかねぇ。なんせ、父さんが重傷を負ったくらいだからねぇ」
「おとうさんが……!?」
行灯が風で揺れ、早乃の影がそれにあわせて揺らめく。
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