始まり

6/12
前へ
/972ページ
次へ
流れてくるそれを見ると、なんと両手でも抱えきれそうにないほど大きな桃だった。 「……なんだいこれは」 あまりのことに早乃はしばらく呆然として立ち尽くしていたが、ようやく我を取り戻すと、洗濯板を使って桃をたぐりよせ目の前に置いた。 (桃……本当に桃かい?) 早乃はその妙な威圧感に圧倒されながら、目の前の桃を眺める。大きさ以上に重いようで、軽く叩くと中から鈍い音がした。 「……何が入ってるのかね」 そう思った早乃は、両手に桃と洗濯物を抱え、えっちらおっちらと家へと戻り始めた。 巨大な桃を軽々と担いでいる辺り、さすがは海児の妻である。
/972ページ

最初のコメントを投稿しよう!

350人が本棚に入れています
本棚に追加