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「殺して、ほしい?」
ただ見ていた張遼が、口を開いた。
どこか、苛立ちを含んだ声色。顔は、…嗚呼、私には顔を上げる気力すら残っては。
確実なのは。
確かな殺気が、渦巻きだして。
小さく頷く。
だから。その殺気で、私を。
「何故、乞う」
一歩。
足音が影が殺気が、近付く。
「…私では、見ての有様だ」
手加減をしてしまっては、意味もない。固まりだした一筋の血が目に映る。これでは足りない、足りないのだ。嗚呼何とおぞましいことか!
「自分で自害もできない癖に。私に乞うのか?ころしてくれ、と」
また一歩。
それと同時にまた、殺気が膨らんだ。濃密に、重苦しく。正常であったら逃げ出したくなるほどの殺気だ。
それでも、今は。
この殺気に、包まれたい、と。
「軍師殿」
「貴方は本当は、死にたくなどないはずだ」
張遼の言葉が、耳から全身に。突き刺さる。
嗚呼。
見破られていた、か。
***
自虐をしたところで結局は、「生」にしがみついて。
愚かしく醜い自分を、誰かに、否定してほしかった。
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