【短編】諸司馬

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【いろはにほへと】*現代パロ 4月。 つい最近までの寒気はなんだったのか、暖かい日差しがそこら中を射している。 心地よい暖かさだ。眠気を誘うこの天候は、あまり好きではないが、悪くも無い。 「あぁ、もう葉桜なんですね」 隣を歩く諸葛亮が、木を仰ぎ見ながら言った。 遅かったが、「開花をした」とテレビの中が騒ぎ立てていたのは、いつだったか。そう、日も開いていない気がする。 「そうだな」 つられて、仰ぎ見てみれば確かにピンクよりも緑の割合の方が随分と多くなっていた。今もそう間断なく、1枚、また1枚と花弁は地面に落ちていて。足元に一層、ピンクが敷かれる。 いや、ピンク、というには少し語弊がある。沢山の人が通ったせいで、花弁は黒く汚れていたし踏まれた跡があまりにも目立っていた。 その姿は、とてもじゃないが美しいとは言えず。 「儚いですね。桜って」 「儚い、か」 ぼんやり、地面の桜を見つめる。 「だって、皆に騒ぎ立てられて、美しくいられるのはほんの数日じゃないですか」 終われば、こうやって踏みつけられて穢される。 それはあまりにも。 「私は、それも良いと思うがな」 「え?」 「1年をかけて、咲いて、散る。確かに儚いが、いっそ清清しいまでに潔いではないか」 言うと、一瞬諸葛亮は驚いた顔をして、ああ確かに、と笑い出した。 色は匂へど 散りぬるを ふいに、思い出した。
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