【短編】遼司馬

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【願いは、】*血の表現があります 「やめろ」 「いやだ」 静止の声。 聞こえない、聞こえない。 やめてなるものか。 ぷつぷつと、赤い玉が徐々に列になり流れ落ちていく。 左手が、少し、赤く染まる。 これはこんなにも鮮やかなものだったか。左手から流れるのは明らかな鮮血。 まるで初めて見たかの様に思えた。 思いきり切ったかと思ったのに、こんなものか。無意識の内、生存本能とやらか、手加減をしたようだ。 それを認識して、また失望した。 ああそうだ。私は自分の弱さに愚かさに気付いてしまった。 一度思考に入ってしまえばあとは、混沌とするだけでいくら考えたところで無駄だ。否定しても否定しても、また否定の堂々巡り。 反吐が出るほどに、苛ついた。 何とも、情けない。 「弱いな」 ああ、私は弱い。言われずとも分かっていて。 いっそのこと、 「ころして、ほしい」
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