Aっていう悪友がいる。

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Aっていう悪友がいる。 そいつ、中学生の時から勉強も何もしないでさ。 偏差値って何? ぐらいの本物のバカ。 中学卒業して俺らが高校行ってる間も何にもしないでずーっと家でゴロゴロしてるんだ。 どうしようもねえだろ? 両親はさぞ手を焼いたことだろうよ。 でさ、俺らが高1の時にそのAにある大きな出来事があったんだ。 父ちゃんが亡くなったんだって。 疲労で突然パタって逝っちゃったらしい。 心不全ていうのか? Aは割と友達が多かったから同級生の結構な数が葬式に行った。 当然俺も。 葬式が始まる前にAと顔会わせた俺は、何て声をかけたらいいかわかんなかった。 本当に。 そんな特別なシチュエーションで言うセリフなんか持ち合わせてるわけない。 けど、もじもじしてる俺にAの方から声かけてきたんだ。 「ネクタイのやり方忘れちゃったよ」 笑いながらそう言ってたよ。 どこかぎこちない笑顔だったけど。 今思うとAは本当辛かったと思う。 親父が死んだんだよ。 突然。 どうしていいかわかんないんだよ。 なのに、俺らの前では平静を装って笑顔なんか見せる。 強がって。 その笑顔は俺らに対する 「俺は大丈夫だから心配するな」 っていうメッセージだと俺は思った。 本当バカだけど本当優しくて凄い奴だよ。
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