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秋の枯れ葉の臭いが混じった風が青年の前を通り過ぎる。冬を知らせる寒さを身体に受け、青年は瞼をゆっくりと上げる。
まず、目に入ったのは白い天井だった。次に入ったのは開いた窓だった。
閉め忘れたのか……。
昨夜、部屋の空気を入れ換える為に開けた事を思い出す。部屋に溜まった寒い空気を肌で感じ、窓にそっと手を伸ばし、閉める。
あの夢の相手は誰なんだろう。
窓を閉めた際、ちらりと見えた並木を見て、ふとさっきまで見ていた夢を思い返してみる。
これは昔からよく見る夢だった。
桜の木の下、自分が誰かと話し、何かを楽しんでいる光景。しかし、どうしても話している相手がわからない。
最初の頃はまだあんなに薄れた夢ではなかった。
まるで記憶のようにその夢は次第に薄れた。
まぁ、いいや。
近くの机に置いてある時計を確認し、少し早いなぁと、思いながら起き上がった。
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