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自己紹介が遅れましたが俺は秋本 浩一(あきもと こういち)。
父親はヨーロッパに出張に行き、今は母親との二人暮らしをする中学三年の受験生である。
学校は桜蘭市にある桜蘭中学。桜並木の道を通り、またその途中の木々に囲まれた道を通り抜けた先に学校がある。これは俺の登校の道筋である。
受験まであと半年。周りの空気も少しだけぴりぴりし始めた頃である。
が、
「秋本!」
黒板の前から教師がどすのきいた怒鳴りをし、窓際の中央にいた俺はゆっくりとだが顔を上げた。
眠気がまだ目に残り、少しの間だったが焦点が合わない。
その先にいる社会の教師。獄大 史男(ごくだい ふみお)は握っていたチョークを折り、ずがずがと近寄って来る。
ゴリラ顔のその教師の行動に例外の金髪一人を除いて、教室の生徒は固唾をのむ。
「先生」
近寄って来た教師の前で呼び、立ち上がる。その意外な行動に獄大はたじろぐ。
「体調が悪いので保健室に行ってもいいですか?」
先手必勝。何かしら言われる前にそれらしい理由を付けて逃げる。
言われた獄大は歯ぎしりをたて、吐き捨てる。本当に体調が優れないならば無理強いを出来ない。
「さっさと行け!」
「はい」
さっと机の間を抜けて、教室を出る。あの先生の叱りをまともに受けるなんて真似はしたくもない。面倒過ぎる。
ここ三年の教室は二階で、保健室は一階にある。まぁ、本当に体調が悪い訳でもないが暇を潰せるような場所は他に見当たらない。
真っ直ぐの廊下を歩き終え、廊下がある右に曲がる。するとその光景に不思議に思う。
階段から上がって来る女子生徒がいたのだ。
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