Prologue

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 生まれ変わった土地に想いを馳せるのもいいのだが、静まり返った教室に足を踏み入れ、みんなの冷たい視線に打ちひしがれるのは、代償としてはいささか大きい。  というわけで、名残惜しくも目線を部屋へと戻し、学校へ向かう準備に取り掛かる。  黒色の寝間着を脱ぎ、壁に吊り下げていた制服を手に取り、制服の裏に隠れていたどこかの誰かさんのポスターとこんにちわ。制服に袖を通し、ボタンを留めていく。  部屋の真ん中に置かれた丸いテーブルには本棚にあるはずの漫画とチップスの袋が散乱し、床には飲み終えたペットボトルの空が2、3本放置されている。テーブルの右手にいささか古くなってきたベッドが置かれ、左手には勉強用の机が鎮座している。ちなみ机の上は綺麗だ。整理整頓は好きなもんでね。  ……まぁ、テーブルの周りを見られたら、信じちゃくれないんだが。  チップスの空袋をごみ箱に叩き込み、空のペットボトルを持って、下へ向かう。漫画は帰ってきてから片付けることにしよう。母さんは仕事へ行くし、特に問題はないだろう。  今は、時間のほうを気にしなければ。
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