Prologue

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 いやぁ、驚いたね。  家の前に広がっていた荒涼とした大地の変わりように。緑なんて、桜や種類のよく分からん木が所々に生えている程度にしかなかったはずなのに。  まず目に飛び込んでくるのは、これでもかというぐらいに青々と茂る芝生。茶色一色だった地面が、緑一色へと変貌していた。目に見える範囲隅々まで。  周りには外壁――レンガかな? よく分からねぇ――が立ち並び、入り口と思われる大きな門には、カメラらしきものまで設置されている。  空き地唯一の紅一点であった桜の木は伐採されることなく、桜の木であることを自己主張するかのように桜の花を満開に咲かせ、たまにそよぐ風にピンクの花びらを纏わせていた。  あの木がそのままということは、根元に埋めたタイムカプセルも無事だろう。掘り返す気なんてさらさらないんだが。  もう建てられた家になんて目を移したくない。あの広大な土地を買い取っただけでも予想がついていたが、生まれ変わった土地の光景を目の当たりにすると、俺の推測もなかなか捨てたもんじゃないと自画自賛してみる。  金持ちが引っ越してきたようだ。
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