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狐が人に化けて町にいたなんて噂が広まれば、もしかしたら稲荷のことが少しは知れ渡るかもしれない。
そうしたら勧誘も少しはしやすくなるし、あわよくば参拝者までゲット出来てお賽銭増加のチャンス…!!!
僕はとりあえず耳も尻尾もしまわないまま、むしろ本物ですよ主張に動かしながら笑顔で女の子を見返した。
「そうだよ、本物だよ。」
「わー…!!さわっていいさわっていい?!」
「いいけど、強くは握らないでね。」
女の子はその返事を聞くか聞かないかという間にもう尻尾へと近づいて行っていた。
恐る恐る触れる、小さな手。
触れた瞬間にひょこりと動かしてやればきゃあきゃあと喜ばれた。
小さい子は可愛いなぁ…。
ロリコンまではいかないにしても、子供好きの心境が少し分かった。
女の子はその後もしばし尻尾にじゃれて遊び、ようやく満足したころには息が上がり頬も昂揚していた。
「きつねのおにぃちゃん、しっぽありがとう!」
「どういたしまして」
ぺこりと頭を下げて礼を言う女の子。
この年でしっかりお礼が言えるとは、親御さんの仕付けがちゃんとしている証拠だ。
その後、女の子はまた僕に笑い掛けてからばいばいと手を振り駈けていった。
僕はその子に手を振り替えしながら見送った。
しかし女の子はこちらを振り向きつつ走っていたため足元が見えなかったらしい。途中で盛大に転ぶ姿が目に入った。
わんわんと泣き出す少女。
僕は見てしまった以上放っとくわけにもいかず、やれやれと女の子の方へ近づいて行った。
「大丈夫?」
「うっうぇっ…あ、あし…あしいたいよ……ひっくうぅ…っうぇーーん!!!」
その場に座り込みただただ泣きじゃくる女の子。
足を怪我したのかと見てみると、膝に擦り傷があった。
このくらいなら大丈夫だろうと僕は女の子を立たせた。
その時、不意に妙な違和感に気付いた。
「あ、あし…あしがいたいよぉ……ままぁ…!!」
一向に泣き止む気配の無い女の子。
おかしい。擦り傷だけでこんな泣き続けるなんて。
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