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「ねぇ、君。」
「ぅ、うぇ…?」
とても痛いのか、血が出過ぎなのか顔色が少し青い少女に僕は問い掛ける。
「僕にお賽銭、くれるかな?」
「おさい…せん…?」
「そう、お賽銭。」
そう言って僕は女の子のポケットに手を入れる。
「これ、僕にくれないかな。」
そう言い取り出したのは、一つの飴玉。
女の子はきょとんとしていたが、僕は答えを急かした。
血は出ていく一方。時間が無い。
「いいかな?」
「う、うん…」
こくりと頷く女の子。
「ありがとう。」
僕は笑顔でそう答え、飴玉を手のひらに乗せた。
お賽銭
しかといただきました。
僕はすぐに飴玉を持った手をしっかりと握りしめ、逆の手で傷口に触れた。
本当はちょっと足りないけどしょうがない。
礼儀正しい子を助けるのは未来への投資ってことで。
握った飴玉が手の平へと溶けていくのが分かる。
そしてそれが入っていくのと同時に、反対の手の平に暖かい光が満ちた。
光りはすぐに収まったが、女の子はその光った所をずっと見ていた。
そして光に驚いたためだろうか。涙はもう止まっていた。
「はい、終わり。」
僕がそう言って手を離すと、足の傷は跡も残さずきれいに治っていた。
「もう痛くないでしょ?」
僕は再度女の子を立たせてにっこりと笑いかけた。
しかし女の子の表情は微妙。
…あれ、治しきれてなかったかな?
だがその心配はすぐ杞憂だと分かった。
だってよく考えたら、傷は二ヶ所あったんだから。
僕は女の子を水のある場所まで連れて行き傷を洗い、絆創膏を張ってあげた。
ちなみに絆創膏は女の子が持っていたものだ。
よく怪我をするらしく、親に持たされていると言っていた。
全ての手当てが終わったあと、女の子はなお不思議そうに僕を見ていた。
「おにぃちゃん、何でさっきみたいにぱあってなおさないの?」
うん、もっともな疑問だ。
でも
「ごめんね、出来ないんだ。」
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