壱目のお祓い

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稲荷から(僕速度)歩いて10分ほど。 そこに、栄えても廃れてもいない普通の田舎町がある。 僕は今、そこにある住宅街を歩いている。 出来ればこんな事したくない。 守り狐が稲荷を離れたらその役割を果たせないし、第一に僕自体が出歩くことがそんなに好きじゃない。 ……理由は空気が不味いからであって、断じて引きこもりなどではない。 それにアスファルトの地面は肉球にはちょっと堅くて痛いし、町の匂いも刺激臭が多くて鼻がバカになる。 そんな至って真面目な理由があるのに、じゃあ何故ここを歩いているのか。 目的は至極簡単。 お賽銭してくれそうな人探し。 またはちょっと賽銭 させても 大丈夫な人探索だ。 普通賽銭はその人のお心遣い、願掛けの駄賃でいただくものだが 如何せんうちの稲荷はまずお参りに来る人がいない。 まぁ悲しいことにその存在自体、あまり知られてないからしょうがないんだけど。 だからあまりしたくはないが、僕直々にこうやって客引き的な事をしに来ているのだ。 「さて、どこかに信仰深そうなのはいないかなー。」 とりあえず見晴らしの良さそうな電柱の上でキョロキョロと見回す格好を取ってみる。 別にこんな事しなくても遠くまで見渡せるんだけど、まぁまずは気分作りからってね。 電柱を中心にぐるりと一回り見てから、僕は行動に移った。
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