壱目のお祓い

6/13

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
まぁ誰にも知られてない稲荷を粗末にしてるって言ったって、そりゃ知られてないから大切にするも何もないんだけどさ。 うーうー唸りながら目の前の草をぶちぶち採取していると、ふと目の前が暗くなった。 誰かが上から見ているらしいと気付くのには少し時間が掛かった。僕は人がいるだろう方向に首を回してみた。 するとそこには、小さな女の子がこちらを覗き込んでいた。 しかもじーっとこちらを強烈に見ている。 見たところ幼稚園か小学校低学年くらいの女の子だが…しかしいくらなんでも直視し過ぎである。 首をそちらに回してしまった為に視線が合わさってしまった。 …め、目線が外せない…。 この状態どうしてくれようかと途方に暮れていると、不意に女の子が笑った。 無邪気という表現がぴったりの笑顔と共に、女の子はこう言った。 「おにぃちゃん、きつねさんなの?」 どうやらさっきの愚痴を聞かれていたようだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加