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その記憶の始まりは白い雪に染まった世界。
俺以外に誰もいない公園。
「っくしゅ……っ」
北風に冷たく染められた指と頬を温めてくれるのは、体温ではなく、家政婦から貰った手袋とマフラーだけ。
「…ゆきだるま作れるかな」
作れるかな。
こんな少ない雪で。
こんな寒い日に。
ひとりきりで。
「ママぁ。ゆきだるま作れるー?」
『作れるかなー?』
その時、俺の右耳に届いた女の子の声。
振り向けば、小さな女の子が母親と手を繋ぎ、ほっぺたを真っ赤にしてペンギンみたいに歩いてくる。
「あれえ?おにーちゃんいるよ。ママぁ?」
『ほんとだ。おにーちゃんいるね。おにーちゃんも雪みにきたのかな。』
それを見てると、「あぁ、母親ってあんな風に笑うんだな」って
子供ながらに思った。
「じゃあ!あーちゃん、おにーちゃんとゆきだるまつくる!」
そう言って俺の裾を掴んだ少女は誰よりも綺麗な笑顔の持ち主だった。
そしてこれが
俺の本当の初恋だった。
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