2人が本棚に入れています
本棚に追加
7歳の時、須藤少年のプレゼントは、大きなクマのぬいぐるみだった。
実際は須藤の人生を大きく変える品物なのだが、少なくとも当時の須藤少年はそう思っていた。
当然現在の須藤が用意したぬいぐるみも、同じものである。
分かりづらく作られた開け口から、日記とノートの写しを入れ、防腐剤も入れて、赤い袋でラッピングした。
全部日記に書いてあったことだ。
一日と6時間というのは、さかのぼる時間を考えれば短いが、ボーっと過ごすには長すぎる時間だ。
作業が終わると、須藤は備え付けのベッドに転がり、持ってきた本を暇つぶしに読み始めた。
8時間の睡眠をはさんで須藤が3冊目の本を手にした少し後、タイムマシンの機会音声が過去への到着を須藤に知らせた。
タイムマシンが姿を現したのは、誰もいるはずのない林の中の空き地。
そこにタイムマシンを残し、林を抜けた須藤は懐かしい35年前の町並みにしばし立ち止まった。
赤と緑のクリスマスカラーに染められた町に、もみの木や、サンタ、雪だるまの置物で着飾った店が立ち並び、あちこちに仕掛けられたネオンや豆電球の光が満ち溢れて、とても真夜中とは思えない賑やかさだ。
大人になった須藤はこれが子供だましに見えるようなクリスマスの飾りつけを見たこともあったが、当時の須藤少年が幻想的な絵本の中に入り込んだかのように錯覚した時のこの光景の感動は、それとは比べるべくもなく、当時を思い出していた須藤もやはりあの時と同じような感動に浸っていた。
最初のコメントを投稿しよう!