奇妙な教室

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 近野勉24歳、教員免許は持っているが、採用試験に受からず勉強中だ。 そんな折、登録している教育事務所から、期間つきの臨時採用の知らせが来た。 何でも交通事故とかで、入院中のわずかな間だけ、教壇に立ってもらいたい、ということらしい。 そんなわけで、6月8日から2週間、わたしは産在小学校で教鞭をとることになった。  担当クラスである6年3組の教室の前で、わたしは一呼吸置いて気合を入れた。 教育実習以来だったから、わたしはだいぶ緊張していた。 扉を開けて中に入り、生徒を着席させたはいいが、座り方が明らかに変だ。 右前の角に一人の生徒がぽつんと座り、その後ろと隣の席が二列ずつ空いている。 まるでその生徒を避けるような座り方になっていたのだ。 わたしは真っ先にいじめを疑ったが、席が空いている理由を聞くとその生徒は明るい声で、休んでいるのだと言った。 いじめに悩んでいるとはとても思えない、普通の生徒と何も変わらない明るい声だった。 それにそんな欠席のしかたなど滅多にないことだろうが、あり得ないことではないので、そのまま出席を取っていたのだが、その日の欠席者は一名しかいなかった。 しかもその一名はどうやらその生徒の周りとは別の、生徒が固まっているところのようだった。 やはりいじめか?そう思ったが、その生徒の特に悩んでいる風でもないのを見ると、どう手を出していいのかまったく分からなくなってしまった。
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