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――数時間前、放課後。
いつも通り授業が終わって直ぐ独り帰路に着いた僕は所用で病院に寄り、それから真っ直ぐ家へと向かっていた。
ちょうどその途中にある小さな十字路にさし当たったところだった。
道の真ん中に水溜まりが出来ていた。
それだけならさして気にする必要はない。
その水溜まりが墨を落としたように真っ黒で蠢いてさえいなければ……。
何故かこんな時に限って僕以外人っ子一人いない。
明らかに嫌な予感しかしない状況で僕はとりあえず三十六計、戦術的撤退を選んだ。
だが、振り返って走り出した筈が次の瞬間には再び水溜まりの方へ体が向いていた。
どうやら逃走は無理らしいともう一度同じことを繰り返すことなく理解してしまった。
「どうしようか」
意味もなく口に出してみるが良い案は浮かばない。
この状況を打破することは出来ない。
死亡フラグか何だか分からないが、とにかくこの黒い水溜まりをどうにかしないと状況が変わらないことだけは確かだ。
意を決して水溜まりに触れ――ずに鞄でぶん殴ってみた。
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