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学校に着き自分の教室の中に入ると、望がどこから持ってきたのか知らないが、クラスの連中とボード版の人生ゲームをやっていた。
そんな望を遠くからつまらなそうに見る和志。俺は鞄を自分の机の上に置くと和志の隣の席に腰を下ろした。
「おはよう和志」
「おー、おはよう」
「あいつさ……何やってんの?」
あいつってのはもちろん望のことだ。
「さあー? 全体的に望は掴めねえとこが多すぎる」
「だな」
和志の言葉に相槌を打つ俺。望は悪い奴じゃないけど、なんか雲みたいな奴で掴みどころがない。やることなすこといつも唐突で意味不明だ。そんな望となぜか馬が合う俺も相当な変わり者か……
そんなことを考えていると、教室も同じクラスの奴らが登校してきて賑わいだした。みんな思い思いに仲が良い奴と話す中、俺に向けられた男ではない声が響いた。
「あのー竹中君。そこ私の席だから……いいかな?」
声の主を振り返る。若干つり上がった目とポニーテールが印象的な女の子だ。名前……分かんねえや。向こうは俺のこと知ってるのに、なんか失礼だな。と少しの罪悪感を感じながら俺は素っ気なく
「ごめん」
と平謝りをすると、立ち上がった。そして、今まで座っていた席とは反対の和志の隣の席に座った。確かこの席の奴は……今望と人生ゲームやってる奴だから座ってても大丈夫だろう。
「相変わらず他人に無関心な奴」
「どうしてそう思う?」
「普通の男子高校生なら、今の状況は笑いながら謝るとこだからな」
つまり女子には鼻の下を伸ばせと? よく分かんねえこと言いやがる。そう思いながら、破産して喚く望を見た。
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