葉賀 美幸という女

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「それ以前に、お前は今話しかけられた女子の名前すら知らないだろ?」 「うん。わかんねえ。だってまだクラス替えしたばかりだしさ」 蓮沼学園は毎年どの学年もクラス替えをする。なんでも学力でA組のクオリティを保つための制度らしい。 まっ、俺には全く関係ない話だ。それどころか友達が少ない俺としては、和志と望とクラスが離れる可能性があるから切実にやめて欲しい。 「彼女、一年の頃も俺たちと同じクラスだったけどな」 「マジで?」 あら……意外な誤算だわ。なんか人の名前と顔を一致させて覚えるのは苦手だ。そんなんだから歴史も苦手だ。というより、俺はそもそも勉強が苦手なんだ。 「嘘つくか。 お前もさ、俺と望以外にもっと積極的に友達作れよ」 「なんだそれ? なんか悲しいぞ。やんわり俺が拒否されてるみたいじゃないか」 「そんなつもりはない」 和志がそう言うんなら、そうなんだろう。じゃあ、いったいどういう意味だ? 「じゃあ、どういうことだよ?」 「別に。もっと高校生活を楽しめってこと。 お前がこの学校に入った理由は分かるけど……お前の人生だぜ?」 「……うるさい」 あまり俺の内側に入って来ないで欲しい。そう俺は和志を言葉で突き飛ばした後、自分の席に戻って朝のHRが始まるまで眠りについた。
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