竹中 隼人という男

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職員室へとゆっくり歩を進めていく。 職員室は嫌いだ。なぜなら俺にとって職員室は怒られる場所にしか過ぎないからだ。 でも呼ばれたからには行くしかない。 和志は確か中村とか言ってたな。 数学か……休み明けテスト赤点だったもんなー。 そんなことを考えながらとろとろと歩を進めたが、当然の如く職員室に着かないということはなく、重い気持ちで俺は職員室の扉をノックした後中に入った。 「失礼しまーす。 二年F組の竹中隼人です。 中村先生に用事があってきました」 そう言うと軽くお辞儀をする。 頭を上げると珈琲の匂いが鼻を刺した。 珈琲が嫌いな俺にとってこの匂いは好ましくない。 嗅いでるだけで舌が苦味を帯びる感じがしそうだ。 後、胃に悪そうな匂いだ。 「おー来たか。竹中こっちこい」 「はい」 職員室の奥で、数学教師のくせに青いプーマジャージを着た中村が俺を呼ぶ。 俺は、昼休みで弁当を食いながら雑談している教師なんかをちらちら横目で見ながら、中村の元へ向かう。 中村の机。つまり中村の前に着くと、中村は厭味ったらしく口角を吊り上げて笑うと唇を震わせる。 「なんで呼ばれたかわかるか?」 「まあ……だいたい」 「ほう、じゃあ何だ?」 「休み明けテストの結果でしょう。ペナルティを潔く受けに来ましたよ」 ホント厭味くさい奴だ。そう思いながら、そんな中村に細やかな反抗として、俺も厭味ったらしく答えた。 「ふんっ、よくわかってるじゃないか」 どうやら中村は俺の細やかな反抗が気に入らなかったらしく、少し不機嫌になった。 こいつ……独裁者タイプだ。生徒にクーデターならぬボイコットを受けた日には、過剰な体罰なんかでズームインデビューしそうだな。
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