竹中 隼人という男

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「とりあえず放課後残れ。補習するから」 「はい……」 俺は一年の頃からこんな感じだ。別に授業をサボってるからだとか素行が悪い訳じゃない。 ただ人には分相応と言う物があって、俺は高校受験の際に背伸びし過ぎた人間だと言うことだ。 ここ私立蓮沼学園は県内でもトップクラスに入る進学校だ。その中でもA組は某有名大学に入れるようなエリート連中が集まる。 まあ、B~G組は適当に分けられてるんだが、A組じゃなくても悲観することなかれ。みんなかなり頭いいから。 でも俺は…… 昔から勉強が苦手で、取り柄といったら人並み以上にはスポーツが出来るってだけ。 ただこの学園……文武両道がモットーで、日本に留まらず海外で活躍するようなアスリートも輩出するような学園だ。だから運動神経がちょっといいからってあまり自慢にならない。 太陽に近づき過ぎた英雄は蝋で固めた翼をもがれ地に墜とされる。ギリシャの神話だったけか? 俺は英雄でもなんでもないただの一般人だけども、受験の際に確かに数ヵ月で蝋で学力という翼を付けた。 その翼も入学してすぐに行われた学力検査試験で見事学年ビリ。翼はもがれたって訳だ。 俺は満足そうに微笑む中村に一礼すると、職員室の出口へと向かって歩いた。
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