竹中 隼人という男

5/7
前へ
/130ページ
次へ
さて、教室に帰って望とこの苦痛と言う響きしかない高校生活を、青春というベールに包んで謳歌しようと考えていた俺に現実は容赦なく襲いかかる。 「あっ、竹中君こっち来てー」 「はい……」 英語の先生に呼ばれ行くと数枚プリントをもらった。 「はい。これ来週の金曜日までに提出ね」 「はあ……」 さあ帰ろう。早く教室に行って和志と共に、故郷の思い出話にでも華を咲かせよう。 「おい竹中~、ちょっとこっち来ーい」 「はい……」 次は世界史の先生だ。最早御決まりと言うかなんというか、案の定 「今日は数学の補習だろう?」 「はい」 「じゃあ明日は世界史だからな」 「はい……」 さあ、早く教室に帰って和志と望に俺の溢れんばかりの愚痴を聞いてもら―― 「竹中! 次はこっち!」 「はい……」 古典の教師のくせに体育会系の男の先生に呼ばれ、再びプリントを渡される俺。 「今週中に提出だからな! 期限過ぎたら腕立て百回してもらう!」 成績と腕立てに何の因果関係があるのか? いや、ない。さすがに俺にでも分かる。 俺は釈然としない気持ちながらも返事をした。 さあ、早く保健室に行って早退しよう。もうやってらんねえよ。そう思っていたのに昼休みの予鈴が無情に鳴り響いた。 「おっ、竹中。一緒に教室に行くか」 「はい……」 後ろにいた物理の先生に言われるがままついていくことになった。確か次は物理だったもんな…… 「おっと、忘れるとこだったがこれ課題な。しっかしお前も大変だなー。はっはっはっ!」 笑い事じゃねえよ。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

638人が本棚に入れています
本棚に追加