竹中 隼人という男

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放課後、教室で一人中村を待つこと約十分。中村はたくさんのプリント抱えてやってきた。 それからは宇宙人よろしく。やっぱり訳の分からない補習を受けた。 「よし。今日はこれくらいで勘弁してやる」 「はあ……ありがとうございます」 「残りのプリントは家でやってくること。わかったな?」 「わかりました……」 俺がそう言うと中村は上機嫌に下手くそな鼻歌を歌いながら教室から出ていった。 俺はと言うと、数学のプリントを鞄の中に入れ足取り重く家へ帰っていった。 学校を出ると街中だ。その街中の迷路のように複雑な路地を抜け、俺は土手道へとやってきた。 陽は低く夕陽が彼方に半分ほど沈みかけている。 俺は向こう側の河川敷で野球をしている子どもたちを遠目に見る。そんな時、奴がやってきた。 「ミャー」 一匹の野良猫だ。毛の色は白。群れから仲間外れなんだろうな。相変わらずところどころに傷を負ってる。 「相変わらずミャーって鳴きやがるか。 猫ならニャーって鳴くのが世間一般の常識だぞ?」 「ミャー」 この猫の名前はミャー。理由はミャーって鳴くから。単純だろ? 去年の秋に腹を空かして弱ってるとこを助けてから仲良くなった。 ミャーは俺の膝の上に飛んでくると、安心しきったように身体を丸めて目を閉じる。 なぜか妙に親近感が沸くのは何故だろう? 俺はミャーを両手で持ち、小さな子どもに高い高いをやるように持ち上げた。 「ミャー」 「なんだ? 俺ん家来るってか?」 「ミャー」 「はいはい。じゃあ行きますか」 なんだか視線を感じたような気がして、俺はミャーと話しながら誤魔化し逃げるように家に帰っていった。
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