1.召喚

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   刀悟が通う私立月島学院は、日本でも有数の難関校として知られている。しかし、それはあくまで表向きの姿。  この学校の真の名は、召喚術協会日本支部。日本中の召喚士が一堂に会し、切磋琢磨する場だ。無論、学生以外の者もいる。難関校と呼ばれる所以は実に単純、召喚士以外入学を認められないからである。 「外装はなかなかじゃのう。寮にも金を掛ければよいというのに」 「そんな無尽蔵に金があるもんか。ただでさえ世界は大不況なんだ。召喚士だけ裕福なわけがない」 「ほう、そうなのか。生憎、私は時代背景を全く知らん」  校門の前で立ち止まり、二人はそんな会話を交わす。スチュワードは召喚時にある程度の知識が吹き込まれるのだが、やはり不足部分も出てくる。  道具の使い方や言葉が分かっていれば問題はないため、それ以外の知識を求めないスチュワードも多かったりするのだ。 「だけど、その服は目立つよな……面倒な事になりそうな気がする」  刀悟は女物の服など持っていないため、繚の服装は新撰組のままだ。基本、服は時代に合わせた物になって現れるのだが、繚は服装へのこだわりが強かったらしく、それが適用されなかった。  世間一般に知れ渡ったその服を見て、他の者が何と言うか……大体予測がついてしまった刀悟は、溜め息を吐きながら校内へと踏み込む。  
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