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「おっす、刀悟。そっちの子はスチュワードか? 可愛いじゃん」
「ああ、優希か。そろそろお前のスチュワードも見せてくれよ」
「そのうちな。俺、まだ召喚してないし」
繚を横に従え、白い廊下を歩く刀悟の正面から歩み寄って来る、赤いローブを纏った青年。青い髪を適当にまとめ、耳にピアスをしている彼は、優男風の表情のままで笑い、そう言った。
刀悟の知り合いらしいが、無論繚は初対面だ。小さく首を傾げて顔を窺う彼女に、刀悟は優希の方を示す。
「八坂優希(ヤサカユウキ)。俺と同じクラスの友達。結構いい奴だから」
「『親友』ね。もう友達なんてレベルじゃないだろ。それはそうと、早くその子を紹介してくれよ」
一つ補足しておくと、スチュワードの本名は召喚主以外に知られても何の問題もない。本名が拘束力を発揮するのは、スチュワードの身体が召喚主の魔力によって形成されているからなのだ。
召喚主以外の魔力を操る事はできないため、そういう意味では心置きなく本名を晒せる。ただ、刀悟はどちらの名前を知らせるべきか迷っていた。そんな事はお構い無しに、繚はいきなり口を開く。
「優希、じゃな。私は百花繚じゃ。土方歳三とも呼ばれておる」
「……はあ?」
優希の反応は至って普遍的だった。言葉の意味が分からなかったのだろう。『土方歳三は男』という常識が固定化された現代では、驚かない者はいないはずである。
繚本人は気にした様子もないが、刀悟はそうだよなあ、などと呟きながら、再び繚を引き連れて歩き出した。
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