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「ふむ、スチュワードの召喚に成功したのですか、刀悟くん。私の所に来たという事は、昇格試験を受ける心積もりですね?」
「はい、桐島先生」
三階の片隅に、ひっそりと佇むように存在する研究室。その中に初めて入った繚は、薬品が放つ独特の臭いにムッとした。その中にいたのは、研究者然とした一人の男。
細い銀縁の眼鏡と、所々正体不明の色素が付着した白衣を纏った彼は、柔和な笑みを浮かべて刀悟と繚を見た。
「うん、なかなか良いスチュワードを見つけましたね。今の君の力量で呼べる、最高のパートナーである事は間違いありません」
「ありがとうございます。それより――」
「はいはい、分かっていますよ。君はせっかちだね。ただ、生憎相手がいないから、しばらくは連絡待ちになるよ。登録しておくから、書類に必要事項を」
刀悟の顔が、一瞬で面倒臭そうな色に染まる。刀悟が受ける昇格試験というのは、スチュワード同士を戦わせ、素質を見るというものだ。丁度よく相手がいれば、翌日にでも昇格試験は実施できる。
が、全く登録がない場合は、わざわざ書類を書いて登録しなければならない。後手に回る方が楽なのだ。それに、ただひたすら連絡を待ち続けるのも骨が折れる。
面倒臭いのオンパレードに刀悟は溜め息を吐きながらも、書類の項目一つ一つに必要事項を記入していった。
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