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「暇じゃのう……暇じゃのう……」
登録から、既に二日が過ぎた。桐島からの音沙汰はなく、二人はただ無為に時を過ごしている。一応授業を受けている刀悟はまだマシだが、繚は今にも暇死にしそうだ。
そんな彼女を見かねたのか、刀悟はテレビの電源を入れる。粗大ゴミ置き場から、彼が昔拾ってきたものだ。古い、やけに重い、数年後には映らなくなるなど欠点は様々あるが、普通に使う分には問題ない。
「仕方ないな。ゲームでもやるか?」
「ゲーム……? それは一体何じゃ?」
袖の部分だけが黒い、白のトレーナーを刀悟から借りて身に纏った繚が、彼の方にすり寄っていく。彼はゲーム機の電源を入れ、コントローラーを手に取った。
「何て言うのかな……まあ、テレビの中で殴り合うんだ」
「ほう……殴り合うのか。よく分からんが、面白そうじゃ」
どうやら、刀悟は格闘ゲームを始めるつもりらしい。そう言った繚の手に、彼はもう一つのコントローラーと説明書を滑り込ませた。彼女が説明書を熟読するうちに、刀悟は好き勝手にゲームを始める。
が、まさにその時。部屋の入口をノックする音が、刀悟をバーチャル世界へ踏み込ませる事を拒む。ただ、彼は逆に嬉しそうだ。
「おっ、やっと相手が決まったか!」
刀悟は黒いコントローラーを放り投げ、扉へとまっすぐに駆けて行った。
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