第一話

3/3
前へ
/35ページ
次へ
「え?それって、」 やばっ、泣き出しそう。 「いや、そういう意味じゃなくてさ。俺よりも良い男はいっぱいいるし、別に俺じゃなくても、」 「壱羽さんじゃないと駄目なんです。」 「え?」 「私、男の人苦手で、好きとかそんな気持ち初めてで、……だから、だから、壱羽さんだけしか…うっ…うっ。」 絢芽ちゃんは心からそう思っていたらしい。 俺は、そんな絢芽ちゃんの気持ちに答えてあげなくちゃいけない。 「良いよ。」 「え?」 「『良いよ。』って言ったんだ。お互いの事を知ってる訳じゃないけど、絢芽ちゃんは良い子だって分かる。むしろ嬉しいくらいだ。だから泣かないで。」 すると、絢芽ちゃんは涙をふいて、嬉しそうにぺこりと頭をさげ、 「あ、ありがとうございます!!不束者ですが何卒よろしくお願いします。旦那様。」 ……ん?今、『旦那様』って。 「あ、絢芽ちゃん?」 「なんですか?旦那様。」 「とりあえず、『旦那様』はやめてくんない?」 「だ、駄目ですか?」 「だ、駄目じゃないけど、ここ学校だから少なくとも。ね?」 「そ、そうですね。壱羽さん。」 顔を赤くして言った。 「い、壱羽さん。今、1人暮らしですか?」 俺の両親は社会勉強になるからと言って1人暮らしをさせてくれている。 「え?あ、うん。そうだけど、」 「よかった。」 「それがどうかしたの?」 「ふふ、秘密です。」 「?」 俺が疑問に思っていると、階段の方へ走って振り返り、 「帰りましょう。壱羽さん。」 流石は良家のお嬢さまと言ったところだろうか。 必要最低限の物は既に届いていた。 「改めて、よろしくお願いしますね。旦那様。」 こうして、波瀾万丈な2人の新婚生活が始まった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加