47人が本棚に入れています
本棚に追加
「え?それって、」
やばっ、泣き出しそう。
「いや、そういう意味じゃなくてさ。俺よりも良い男はいっぱいいるし、別に俺じゃなくても、」
「壱羽さんじゃないと駄目なんです。」
「え?」
「私、男の人苦手で、好きとかそんな気持ち初めてで、……だから、だから、壱羽さんだけしか…うっ…うっ。」
絢芽ちゃんは心からそう思っていたらしい。
俺は、そんな絢芽ちゃんの気持ちに答えてあげなくちゃいけない。
「良いよ。」
「え?」
「『良いよ。』って言ったんだ。お互いの事を知ってる訳じゃないけど、絢芽ちゃんは良い子だって分かる。むしろ嬉しいくらいだ。だから泣かないで。」
すると、絢芽ちゃんは涙をふいて、嬉しそうにぺこりと頭をさげ、
「あ、ありがとうございます!!不束者ですが何卒よろしくお願いします。旦那様。」
……ん?今、『旦那様』って。
「あ、絢芽ちゃん?」
「なんですか?旦那様。」
「とりあえず、『旦那様』はやめてくんない?」
「だ、駄目ですか?」
「だ、駄目じゃないけど、ここ学校だから少なくとも。ね?」
「そ、そうですね。壱羽さん。」
顔を赤くして言った。
「い、壱羽さん。今、1人暮らしですか?」
俺の両親は社会勉強になるからと言って1人暮らしをさせてくれている。
「え?あ、うん。そうだけど、」
「よかった。」
「それがどうかしたの?」
「ふふ、秘密です。」
「?」
俺が疑問に思っていると、階段の方へ走って振り返り、
「帰りましょう。壱羽さん。」
流石は良家のお嬢さまと言ったところだろうか。
必要最低限の物は既に届いていた。
「改めて、よろしくお願いしますね。旦那様。」
こうして、波瀾万丈な2人の新婚生活が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!