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……
「どうしたかな?2人共、キョトンとして。」
いやいや、キョトンとしない方がどうかしてる。
「絢芽。帰ろう。」
「い、嫌です。」
ホントに連れ戻し始めた。
「何で?」
「お兄さまがいるからです。」
え?ということは、悲しそうな顔をしていたのは寂しいからじゃなくて兄貴の事を思い出したく無かったから?
「………」
結構効いて、
「『嫌よ嫌よも好きのうち』ってね~。」
無ぇ!?
これが不屈の闘志か。
―って、んなアホな事考えてる場合じゃなかった。
止めなくちゃな。
ど、どうやって?
とりあえず、あのバカ兄貴を止めた方が良いな。
止めるためには……やはり、急所だな。
というわけでアイコンタクト。
「絢芽ちゃん。」
「なんですか?」
「足を思いっきり蹴り上げて。」
「え?」
「いいから早く。」
「は、はい。」
絢芽ちゃんは頷くと思いっきり蹴り上げた。
「えい!!」
「ぐはぁ。」
絢芽ちゃんの蹴り上げた足は俺の予想通り壮馬の、そう漢(おとこ)の急所にクリーンヒット。
痛いんだよなぁ、アレ。
膝が落ち、見事に悶えている壮馬。
「あ、あや、あや…め。」
「何かご用ですか?お兄さま。」
「はい。無いです。」
絢芽ちゃん。その笑顔がなんか怖いよ。
「お兄さま、お願いです。帰って下さい。私は帰る気はこれっぽっち無いですから。」
「…はい。」
壮馬は急所を抑え、内股で帰っていった。
か、格好悪ぃ。
「あ、あの…。」
「え?」
「ありがとうございました。」
「あぁ。でも大丈夫か?」
流石に思いっきりだったからな。
「はい。あのくらいはしないと。それに、どんなことがあっても私は旦那様のもとを離れる気はありませんから。」
「ちょっっっ。」
俺の顔が赤くなってるのを見て首を傾げている。
今の素で言ってたのか。
いじらしいな畜生!!
次の日
「……というわけだ。」
「そりゃ災難だったな、壱羽。」
「まぁ、北山が居なかったからまだ楽だったがな。」
「何を言うか。」
「事実だろ。」
「ふふ。」
「絢芽ちゃんまで笑うことはないだろう。」
と、そんなたわい無い話をしていると。
「絢芽!僕のところへ帰ってこい!」
「お、お兄さま!?」
出たよ、ストーカー。
誰か、警察を呼んでくれ。
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