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「博士は、5年半続いた大戦初期に行方不明となっている。
もし仮に、あの現象が当時から続いていたとするなら、博士は60年近く時間停止、いや、固定された空間にいた事になる」
呆気に取られるフィフィ。
「…え…うそ、じゃあ、今は…」
何とか思考を凝らし、現状把握に努める。
クロフォードの言う事が事実なら、今は、自分が認識する世界から60年近く経った未来。
彼らが自分の存在に驚異を感じているのも、これで納得がいく。
空間固定。
その御技に、フィフィは覚えがあった。
「あたしのいた場所の、現象って…」
「これがそうだ」
クロフォードがPCボードを手渡す。
そこに映るのは、黄金色のドーム状の何か。
「あ…」
言葉を、失う。
平静を保っていたフィフィの感情が、揺れる。
「この現象に、何か心辺りでも」
そこまで言って、クロフォードは口をつぐむ。
タガが外れ、決壊したかのように涙をボロボロと流すフィフィ。
「あれ?
あたし…
違う、こんな…こんな筈じゃなかったのに…
あたしは…
う…」
それ以上は言葉にならず、声を殺し、止まらぬ涙を流し続けた。
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