顕現する殺意

4/9

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
「あたしがここに居続けると、貴方達を危険に晒す可能性がある。  あたしは、それが何より怖い」 クロフォードは、フィフィが保護された地点の映像を思い返していた。 おびただしい数の、戦闘の名残。 彼女は、いったいどのような境遇にあるのか。 「だから、あたしはここに長居しちゃいけないの。  ごめんなさい…」 俯き謝罪するフィフィに、クロフォードは掛ける言葉が見付からなかった。 彼女は、おそらく何らかの事件に巻き込まれ、命を狙われたのだろう。 しかもその口振りは、60年近く経過した現在も、その危機が継続している事を示唆する。 尋常な事態では無い。 しかし、仮にそうだとしても、彼女がここに居る事実が知られているとは思えない。 だから本人も、一時的な協力を願い出たのだろう。 フィフィの不安が杞憂に終わればいいが、クロフォードは、彼女の過去を公然としたものしか知らない。 局員の命を預かる身として、僅かな不安要素を前に、尚も食い下がる事は出来なかった。
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加