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自分に向けられた殺意を前に、フィフィは抗おうとはしなかった。
ただ、涙が頬を伝う。
「今すぐ殺してやりたいけど」
アノンは、螺旋と光刃を消し、嘲笑を浮かべる。
「残念ながら、まだだ。
お前には世界再生を果たしてもらわないと困るらしくてね。
僕はどうでもいいんだけど。
『ユミル』は、それを望んでいるんだ」
フィフィの表情が、見る間に強張る。
「『ユミル』…?
アノン、貴方まさか…」
「ああ、そうだよ。
今の僕は、『ユミル』の一員さ。
お前、さっき言ったね?
僕がどうしていたかって。
身体の自由の利かない『干渉能力者』が、たった1人残されればどうなるか…
想像するまでも無いだろ」
その瞳は鋭く、深く冷たい。
それは絶望を知るが故の境地か。
「どれだけ苦しくても、“エリシャ”を感じられれば、それが拠り所で、救いで…
その“エリシャ”が死んだ。
生きる為には、奴等の手先になるほか道は無かった。
蔑むかい?
哀れむかい?
何にしても、お前にどうこう言われる筋合いは無い」
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