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だが、緩やかな、確実な変化が存在した。
空気の流れがある。
吹き抜けた風が、フィフィの艶やかな赤毛を揺らし、吹きすぎてゆく。
時折なびく髪を抑えつつ、遠方の空を見やった。
一羽の、白い鳥が悠然と羽ばたき、風に乗って飛んでいた。
フィフィから離れた上空ではあるが、反転現象の残留効果範囲内の筈の領域。
それが意味するのは、『オーディン』の影響の消失だった。
フィフィは『干渉力』によって、空間に残留する反転現象に干渉し、その無効化を行った。
以前、『ジャシアン』支部でミリアやミフユ達に対して宣言した、『オーディン』の名残の解決手段。
フィフィは、自身の『干渉力』で行うつもりだったのだ。
「ふぅ…」
フィフィの今行った無効化範囲は数百キロに及ぶ。
想像以上に能力使用の負荷が大きかった様だ。
「…まだ、始めたばかりだもんね…
弱音なんて、吐いてらんない」
周囲を見渡す。
無効化を行いはしたが、そこには何も無い。
今は、まだ。
フィフィは『メサイア』による再生を祈りつつ、次の予定ポイントへ『転移』した。
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