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それは、唐突に現れた。
憎悪を抱き、殺意を振り撒く、嘲笑を浮かべた人物。
「…アノン」
不意に現れたアノンは、数体のアンドロイドを引き連れていた。
フィフィの知るアノンは、心優しい、無垢な少年だった。
だが、目の前の存在は、鋭利な抜き身の刀を思わせる。
「これ以上、待てなくてね。
…ざわつくんだ。
お前を早く殺したくて、胸が締め付けられる思いだったよ」
額を押さえてアノンは笑う。
「なんで…今なの?」
恐怖より先に、疑問符が頭を過る。
アノンが来訪してから、暫くしてやや平静を取り戻した時、やはり浮かんだのは疑問だった。
「なぜって?
この間伝えた筈だよ。
お前を殺すと」
醜悪な笑み。
その意思に、なんの躊躇いも感じられない。
「違う。
…アノン、貴方言ったわね?
『ユミル』も、世界の再生を望んでいると。
でも、『メサイア』は完成していない。
それに、『オーディン』の残留現象を消さないと、現状の脱却は難しい。
なのに、貴方はあたしの前に現れた」
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