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アノンは笑みを崩さない。
フィフィの指摘を否定する気もなく、気付かれた事に対して動揺する事もない。
「『ユミル』に従うなら、『ジャシアン』に来て、あたしを追い詰める事に意味はなかった。
今、あたしに殺意を向ける意味も。
…アノン、貴方は…」
「察しの通りだよ、シルバーツ」
あっさりと、フィフィの言葉を肯定する。
「僕はこうも言った。
どうでもいいってね。
今は、『ユミル』という、世界の半分を統べる組織を利用しているに過ぎない。
奴等とは、近いうちにケリを付ける」
その発言は、あまりに危ういものだった。
「貴方は…
世界を壊したいの?」
アノンの笑みは、フィフィの言葉をまたしても肯定していた。
「…僕が何故、『ユミル』に席を置いていたか、分かるかい?」
「え?」
「どんなに強い感情も、時と共に色褪せる。
僕は、憎しみも絶望も…
感じた全てを忘れない為に、最も憎むべき存在の傍らに居続けた。
そう…
今日という、この時の為に」
数十年、その感情を保ち続ける為の選択。
それほどまでに憎いのか。
アノンの闇は、どれだけ深いのだろう。
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