今此所に在る意味

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「『転移』が扱えるんだ。  そこそこできるんだろ?  見せてみろよ」 アノンの後ろに居た、二足歩行の獣を思わせるアンドロイドが前に出る。 問答の時間は終わり、そう、アノンが告げていた。 「貴方が受けた苦しみを、あたしは知らない。  でも」 「命乞いか? お前の言葉こそ、どうでもいいんだよ!」 アノンが吐き捨てた直後、それを皮切りにフィフィへ踊り掛かる5体の黒銀の獣、『ファング』。 フィフィは瞬時に飛び退き、数メートル後退する。 戸惑いがあった。 殺意を向けるアノン。 フィフィは、彼の気持ちが分かる気がした。 人は、1人では生きていけない。 フィフィにとっての全てがエリシャという女性であるように、アノンにとって、その存在は災厄の中の光だった。 例え離れていても、その存在を感じられる。 それが、心の拠り所だったのだ。 そのエリシャが、“あたし”を守り、命を落とした。 “あたし”が殺した様なものだ。 アノンの光を奪ったのは、“あたし”だ。 自分は、アノンの憎しみを否定できない。
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