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フィフィの瞳には、様々な感情が見て取れた。
覚悟や、決意が在る。
けれど、アノンを敵と割り切れはしない。
例え殺意を抱かれようと、自分の感情は別に在る。
それでも、今、こんな所で死ねない。
どうすればいい?
どうすれば、乗り切れるだろう。
どうすれば、皆の望む未来が掴み取れる?
「だからあたしは、まだ死ねない!」
戸惑いは消えない。
それでも、生きねばならない。
その為には、彼を。
「クク…ッ、ハハハ。
良かったよ。
お前がこんなにも目障りで、燗に障る奴で。
また1つ、殺したい理由が増えた」
あらゆる感情が錯綜し、ない交ぜのままに。
2人の間に、一瞬の沈黙。
そして、
「楽に死ねると思うなよ」
螺旋状の『エンゲージ』を両腕に生み出し、アノンは焦がれ、待ち望んだ瞬間を前に、醜悪に笑った。
光刃を形成し、一足でフィフィに斬り掛かる。
『転移』を使用した訳ではない。
だが瞬きが許されるような速度ではなかった。
間一髪不可視の『盾』で受け止めるが、止めたのは刹那の間。
『盾』を貫通してきた光刃が、浅く腕を切り裂いた。
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