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「…ごめんね」
自分に覆い被さるアノンを、傷の痛みに耐えながら優しく地面に寝かせるフィフィ。
息はある。
アノンは意識を失っているだけの様だ。
「うっ」
フィフィの受けている傷はあまりに深く、半身を起こす事もままならなかった。
眠い。
強烈な眠気が襲ってくる。
だが、今眠りに落ちれば二度と目覚める事は無いだろう。
一瞬の思考。
ここで死ねば楽かもしれない。
これ以上苦しむ事も無く、愛した人の元にも逝ける。
「ううっ、ぐ」
だが、それは自分の生き方の否定だ。
自身の選択からの逃避でしかない。
愛する人に誇れる様に。
自身を誇れる様に。
フィフィは、自分の命を諦めなかった。
緑の輝きを放ち始めるフィフィ。
それは、生命の輝き。
出血の多かった傷口が見る間に治癒されていく。
アノンを殺せない自分。
それは願いの体現か、それとも甘さか。
次に相対した時、倒れるのは自分だろう。
それを分かっていながらに、アノンを生かす。
彼が自分の死を願うなら、役目を終えた時、受け入れようとも思う。
それもまた、贖罪なのだから。
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