願う、その心のままに

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フィフィが『ジャシアン』支部を後にして半日。 「どお?」 「シルバーツ博士って、プログラマーじゃないだろ? よくここまでの設計が出来たな」 ミリアに渡された、フィフィの『メサイア』システムの全容を前に、感嘆の意を表す開発メンバーの男。 「で?」 ミリアに促され、再びディスプレイに視線を向ける。 「良く出来てるよ。 これなら、さほど掛からずに運用テストまで持っていける。  …それにしても」 「何か気になる事でも?」 「この、惑星との同調を測りながら複製と補完をループさせるシステム… 量子力学を踏まえた演算でも、類似したシステムは完成していないんだぞ? なのに、『干渉力』から生まれる『複製』は、それを可能としている。  しかも無機化合物を含んでだ。 物理学者が知ったら卒倒するね」 男の言葉に、ミリアは首を傾げる。 「ん? でも、シルバーツ博士って、物理学の博士号持ってるよね?」 「そう、なのか…」 定説を打ち破る、目の前にあるシステム。 科学を信じる者にとって、それは受け入れ難いものかもしれない。
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