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「まずはもう少し目を通してみるよ。
プログラムの概要は早目に把握しときたいからな」
「分かった。
ダリル。
2時間後にミーティングなんだから、遅れないでよ?」
「分かってるって」
その後デスクにかじりつく様に集中するダリルを確認しつつ、室内を後にするミリア。
実物の『メサイア』の完成にはまだ暫く掛かるとはいえ、今から完成が待ち遠しかった。
施設内の雰囲気は何時にも増して明るい。
『ジャシアン』という組織の大願が果たされる、その瞬間が間近に迫っているのだ。
ミリアだけではない、それは組織に在る者全ての願いであった。
歩を進めている時、何か得体の知れない意識を感じ取るミリア。
「ん…?」
ミリアの『感応力』は意識体の感情を読み取れる。
その精密さは、対象との距離に比例する。
施設内の穏やかな感情の波の中で、その感情は浮いていた。
漠然と感じられるそれは、
「冷たくて利己的な…
誰?」
両腕を抱え、身震いする。
無機質な衣を纏い、内の冷徹さを覆い隠す様な感覚。
ミリアには、それが余計に生々しく感じられた。
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