願う、その心のままに

5/21
前へ
/203ページ
次へ
「ミリア、どうした?」 廊下で佇む同僚の異変に気付き、歩み寄るミフユ。 「…う…ん、ちょっとね」 歯切れの悪いミリアをいぶかしむ。 「なんだ、顔色悪いな。 ミーティングまで休んでていいぞ。  根詰めすぎだ」 「いや、それはいいんだけど…」 気掛かりは別にある。 そして、その不快な感情が強く感じられてきた。 「え…」 自分が歩いてきた廊下の先から現れた1人の男。 平然と、無表情で歩みを進め、ミリアの横を通り過ぎて行く。 ミリアの背中を冷たい汗が伝い、悪寒が走った。 「今の、人…」 「ん?  あ…誰だ?  確かに見掛け無い顔だが」 男の後ろ姿が廊下の角で確認できなくなった後も、その見失った先から視線が離せなかった。 嫌な予感がする。 あの男の存在が、言い様の無い不安感を掻き立てた。 瞬間、施設内の警報がけたたましく鳴り響いた。 「なっ、何だ?  あ、おい!  ミリア!」 制止の声を無視して駆けるミリア。 何が起きたかは不明だ。 だが、その原因が誰の手によるものか、確信だけが在った。 あの男だ。
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加