願う、その心のままに

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無論情報規制は行われている。 警備側も今の今まで『メサイア』を知らなかった筈だ。 『メサイア』の設計データが完成したのはつい昨日の事だ。 こちらの動きを把握してたとしか思えない。 「何者だ?  こいつ…」 無力化された男が微かに笑う。 男の掛けられている手錠、CDBW(脳波抑制装置)は、超能力を使用する際に放出される、特殊な脳波の発生を阻害する効果がある。 それにより、男の『念動力』を無効化していた。 吐血する男が、静かに口を開く。 「クク… データが渡っていれば、これ以上、死人を出さずに済んだものを…  馬鹿め」 言い終えると、男は事切れた。 「なに?  どういう…」 ミフユは疑問を口にしながらも、最悪の展開を予感した。 周囲を見渡す。 ロビーは混乱していた。 ここは民間団体の施設だ。 セキュリティ上警備員や、ガラッドのような、政府機関から派遣された警護官が常駐してるとはいえ、この様な事態を想定など出来よう筈が無かった。 血に染まるフロア。 死傷者の多くを生んだ僅かな間の惨劇は、まるで天災にでも見舞われたかの様だった。
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