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これ以上があるのか?
何故、こんな事に?
倒れた同僚に泣いてすがる女性研究員がいる。
慌ててストレッチャーで運ばれていく人。
手遅れで、見開かれた瞼を閉じ、それを悼む医療スタッフ。
救急スタッフを待ち望む声が、遅れて現れたクロフォードの声が、あらゆるその場の混乱が、ミフユの、皆の世界を壊していた。
気付けばミリアが救護を手伝い、ガラッドは他の警備員と共に、他の脅威を警戒し動いている。
「あ…
あぁ…」
ミフユは、混沌の渦中で立ちすくんでいた。
先程までの勇ましい姿は既に失せている。
明確な敵が消えた先に残る状況は、ミフユの脳裏に焼き付いて離れないトラウマを呼び起こす。
太陽光に焼かれ、誰もが混迷の中に在った、生まれ育った国。
未だ悪夢にうなされるそれが思い出され、ミフユの思考を停止させていた。
「うぅ、あ…」
両耳を押さえ、膝を床に着く。
「ミフユ?
どうしたの?
ねぇ、しっかりしてよ…
ミフユ!」
異変に気付いたミリアが、震えてさえいる同僚の元に参じる。
いつも気丈で冷静な姿が、そこには無かった。
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