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「何だ…?
あれは」
混乱する1階ロビーの出入口に、奇怪なシルエットを持つ何かが現れた。
刀剣の様に伸びた爪、二足歩行だが獣の様相を彷彿とさせる体躯。
だが、黒と銀色を基調としたメタリックな鈍い輝きを放つボディーから、明らかに人工物と分かる。
その黒銀の獣が首をもたげ、ロビー内の人々を碧眼で見渡していた。
緩やかにロビー内に侵入してくる獣。
両腕を、鋭爪を広げて前進してくる姿は、脅威以外の何ものでも無かった。
「と、止まれ!」
慌てて前に出て銃を構える警備員。
その胸を、獣は鋭爪で貫いた。
流れる様に、何の躊躇いも無い一閃。
その場の空気が凍り付く。
貫いた警備員を無造作に獣が投げ捨て、絶命した命が床に転がったところで、一斉に悲鳴が巻き起こる。
先程とは別個の恐怖が支配した。
この場に留まれば、命は無い。
無機質な殺意が、人の理性を奪った。
我先にと逃げ惑う人々。
黒銀の獣が、恐怖で腰の抜けた女性研究員の首を薙いだ。
「てめえっ!」
震える両腕で銃口を獣へ向け、引き金を引くガラッド。
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