願う、その心のままに

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理解している。 無理だ。 どうにもならない。 それでも銃を握り続けるのは、警護官としての意地か。 しかし、その僅かな抵抗さえ届きはしない。 弾丸は、不可視の力で獣から逸れていく。 「な…」 いくら撃とうが命中する事は無かった。 それまでこちらの動揺を嘲笑うかの様に緩慢だった獣の歩み。 だが、 「なっ!?」 一足でガラッドに接近し、長爪を振るってきた。 今まで生きてきた中で全霊の回避行動を取るが、右腕を断ち切られた。 「ぐおァっ」 衝撃と激痛に、床に倒れ込む。 「ガラッド!!」 ミリアの絶叫に、思考が戻されるミフユ。 「なん、だ?」 黒銀の獣は、1体ではなかった。 次々施設内に進攻してくる獣達。 人々が逃げた先からも現れ、獣はその爪を血に染めてゆく。 「なんなのいったい…  もう、やめてよ…  私達が何したって言うの…」 無情に振るわれる凶刃に、人は、為す術が無かった。 ミリアの哀願も、 「いやぁ!  やめて、助けてぇっ」 逃げ惑う人の悲鳴も、血流に変わり行く。
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