願う、その心のままに

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気付けば、ミリアとミフユの前に、黒銀の獣がいた。 誰もが認めたくは無かった。 これからなんだ。 自分達の夢を、未来を掴むのは。 なのに、こんな結末は有り得ない。 こんな終わりを迎える為に此処に在った訳じゃない。 悔しかった。 憎らしかった。 こんな事を平然と行える何かが、許せなかった。 獣が腕を振りかぶり、ミフユが“私”を庇おうと前に出る。 最後の瞬間、“私”は冷静だった。 ただ、自分達の全てを踏みにじる悪魔の姿を、目に焼き付けたかった。 だから、目の前から視線を逸らしはしなかった。 その瞬間が、酷く緩やかに感じられる。 緩やかな死への時間。 それは、唐突に終わりを迎える。 ミリアの死角から現れた光が、獣の上半身を消し去った。 「…え?」 ミリアとミフユが、いや、生き残っていた全員が、宙に忽然と現れた奇跡の存在に、恐怖を忘れ、魅せられていた。 「あ…あぁ…」 言葉にならない。 その奇跡は、死を眼前に突き付けられた者達全てに、明日を見せた。
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