28人が本棚に入れています
本棚に追加
気付けば、ミリアとミフユの前に、黒銀の獣がいた。
誰もが認めたくは無かった。
これからなんだ。
自分達の夢を、未来を掴むのは。
なのに、こんな結末は有り得ない。
こんな終わりを迎える為に此処に在った訳じゃない。
悔しかった。
憎らしかった。
こんな事を平然と行える何かが、許せなかった。
獣が腕を振りかぶり、ミフユが“私”を庇おうと前に出る。
最後の瞬間、“私”は冷静だった。
ただ、自分達の全てを踏みにじる悪魔の姿を、目に焼き付けたかった。
だから、目の前から視線を逸らしはしなかった。
その瞬間が、酷く緩やかに感じられる。
緩やかな死への時間。
それは、唐突に終わりを迎える。
ミリアの死角から現れた光が、獣の上半身を消し去った。
「…え?」
ミリアとミフユが、いや、生き残っていた全員が、宙に忽然と現れた奇跡の存在に、恐怖を忘れ、魅せられていた。
「あ…あぁ…」
言葉にならない。
その奇跡は、死を眼前に突き付けられた者達全てに、明日を見せた。
最初のコメントを投稿しよう!