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目覚ましのけたたましい音に驚き、飛び起きる。
時計を見る。
ー8:30。
…大丈夫だ。
彼はいつも寝坊ばかりしているが、今日は真姫との初めてのデートということで、張り切っているのだろう。
しかしまだ完全に目が覚めていない状態なので、もう一度ベッドに潜り込む。
ー寝なきゃ大丈夫だ。
ぼうっと天井を眺める。クリーム色の何もない天井。
手を伸ばして薄いカーテンを開け放つと、春の優しい光が薄暗い部屋に滑り込んできた。
外では昨日の雨の雫が、まだ木々に残っている。陽光に反射して、キラキラと宝石のように輝く。
微かに開いた窓からは、残った雨の香りと、自然と廃棄ガスの混じった妙な臭いが入ってくる。
そんな平和な風景を見てると、だんだんうとうとしてきてしまう。
はっと気付き飛び起きると、もう一度時間を確認する。
ーよかった。
彼は自分の頬を思いきり叩くと、ベッドから飛び起きた。
いつもと変わらない朝食。
食パンに、ストロベリージャムを塗りたくる。彼は特別甘党らしく、尋常じゃない程ジャムを塗る。
それにコーンスープ。あとは何故かカロリーメイト。
いつもと違い時間に余裕があるので、今日の彼は朝食を楽しんでいた。
…しかしまあ、パンの朝食にも飽きたな。
ジャム率のが多いんじゃないか、と思われるくらいのパンを頬張りながら思う。
それをコーンスープで流しこみ、最後にカロリーメイトを詰め込み服を着替える。
彼はいつもと違い、異様に髪型を気にしながら、家を出る。
「行ってきます」
もちろん、返事はない。
彼が出て行った部屋は、何の物音もしなかった。
しかし、箪笥の扉が不自然に開いていた。
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