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「そうだ、君は家に帰らなくて大丈夫だったのか?」
「親なんて帰ってこない。いつも家に一人だもん」
「……」
「だから、
久保さんが記憶取り戻すまでここに居る!」
目を丸くした久保さんが止めに入る。
「だ、駄目だって。そ、それはさすがにいけない」
「じゃあ久保さんは一人で平気?
何も覚えてないんでしょ?
…それに
…誰も居ない家に帰りたくないの」
「…俺が記憶、取り戻すまでたからな」
久保さんは笑って、居候を受け入れてくれた。
「ね、何か食べる?」
「ああ。宜しく」
「ちょっと台所借りるね」
台所に立って久保さんのことを考えてみた。
記憶喪失…かぁ。
怪我してるから、喧嘩か何かで衝撃を受けちゃって、気を失ってそれからかも。
酔った勢いで喧嘩をしてしまったのかもしれない。
ああは言っちゃったけど、男の人と住むとか…。
でも家族なんて、いないも同然のようなものだから、家へ帰っても寂しくなくなるかも……。
「熱っ」
考えすぎて鍋にそのまま触れてしまった。
「どうした!?」
あたしの声を聞いて、慌てた表情で久保さんが出てきた。
「ちょっと熱かっただけ。少し冷やせば治るから」
水道の蛇口をひねり、水を指にかけ流す。
「もう少し待っててね。すぐに出来るから」
「あぁ」
後ろから立ったままの久保さんの視線を感じる。
「…あのさ」
「なぁに?」
「明日、
俺が倒れてたとこ案内してくれないか。
何か思い出せるかもしれない」
振り返って久保さんの顔を見ると、言っていることと気持ちが違うことが伝わってくる。
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